東洋医学
陰陽の思想
東洋には「陰陽」の思想があります。すべての物事は相反する2つの面を持ち、この2つの面があることで調和を保っています。月と太陽、男と女、上と下、前と後ろというように、この世界のすべては陰陽の上に成り立ち、どちらかが欠けたり、どちらかが比重を占め過ぎるとうまく機能しなくなります。
人の体もしかり。東洋医学の考えに基づけば、体質や病状、悪い個所などはすべて陰と陽に分けることができます。そしてこの陰と陽の調和が取れてこそ、人間は初めて健康な状態が保たれるのです。反対に陰陽のバランスが崩れると病気になります。では、どんなときに陰陽のバランスが崩れるのでしょうか?
七情と六淫の邪
陰陽のバランスを乱すものには内的要因と外的要因があります。内的なものは東洋医学で「七情」と呼ばれる精神的ストレスです。「喜」「怒」「憂」「思」「悲」「恐」「驚」この7つの感情のうちどれか1つに偏った状態が長く続くと精神的に不安定になり、内蔵の働きに影響します。また、病気になったり精神疾患を患った場合も七情からその内的要因を探ることができます。
外的要因は「六淫の邪」と呼ばれます。「風」「寒」「暑」「湿」「燥」「火(熱)」という四季の移り変わりに応じて盛衰する6つの気候です。通常、緩やかに移り変わる場合は問題は少ないのですが、急激に変化すると体に悪い影響を及ぼします。季節の変わり目に体調を崩しやすくなるのは、こういった理由によります。
虚と実
東洋医学では、人の体質は「虚」と「実」の2つに大別されます。体がだるい、顔が青白い、手足が冷える、消化不良を起こしやすい――。こういった症状が常に現れる人は虚弱体質の「虚」に分類されます。
一方、「実」の体質は体力があり病気に対する抵抗力も強いのですが、赤ら顔、体が熱っぽい、口が渇きやすいなどの特徴を持っています。一見、血気盛んで元気な印象を与えるのですが、突然死などは「実」の体質に多いといわれています。
気、血、水
東洋医学ではまた、総称して「津液」と呼ばれる人体の「気」「血」「水」の流れを重視します。人はこの3つがスムーズに流れているときに健康であり、流れが滞ったり、不足すると心身に不調をきたします。
「気」の流れに問題が生じると精神的に不安定になり、怒りっぽくなります。ヒステリーを起こしやすくなるのも気の流れが滞ったときです。このほか、胸苦しい、食欲不振、動悸などの症状も起こります。
「血」の流れに問題があると皮膚やくちびる、歯ぐきや舌の色が悪くなり、目の下にくまができます。また、のぼせ、生理不順、貧血なども引き起こします。
「水」の流れはおう吐、下痢、便秘、たん、鼻水といった症状になって表れます。このうちエネルギーを意味する「気」は、内蔵の働きを活発にし、情緒をつかさどります。まさに元気の「気」ですね。気功はこの気を健全に保つために考案されたもので、気が流れる体内の通路を「経絡」、「気」が集中するいわゆるツボのことを「経穴」「穴位」と呼びます。
自分の体質が虚なのか実なのかを知り、体質に合った食材を意識して取るように心がけ、適度な運動と十分な休息を取ることで体内の陰陽のバランスが整ってきます。体の声に耳を傾け、不調の原因を探ることで、生物に本来備わっている自己回復機能が働き始めるのです。