基本情報
福建省
変化に富んだ地形と豊な資源
珠江デルタと長江デルタに隣接し、台湾を望む中国本土の重要な貿易拠点の一つ。古くから交易が栄え、その昔、同省の港から欧州に向けて中国茶の輸出が行われていた。
人口約3488万人、総面積12万1400平方キロメートルのうち海域面積は13.63平方メートル。亜熱帯の穏やかな気候が豊かな資源を育み、省面積に森林が占める割合は60.5%。中国でも最も森林が多い地域であり、「南方緑色宝庫」と呼ばれる一方、海岸線の長さは中国第2位の3324キロメートル、アモイ湾、福州港、湄洲湾など港も多い。
漁業も盛んで、省全体の魚の養殖面積は約1000平方キロメートル、水産品の総生産量は中国第2位。水力、風力を生かした再生可能エネルギーの活用も行われている。また、中国茶の生産で知られ、安渓鉄観音、武夷大紅袍などの茶どころでもある。
海のシルクロード
福建省は中国でも最も早くから外国との交易を始めた地域。南宋と元代には泉州市は世界最大の商港の一つとなり、100以上の国・地域と通商を行い「海のシルクロード」と呼ばれた。
鄧小平が推し進めた改革開放でも地理的優位性、特に台湾との距離の近さを生かし多くの台湾資本を呼び込んだ。特に経済特区の福建省廈門(アモイ)市は同省の中でも最も発展著しく、台湾と本土の三通(直接の通商、通航、通郵)実現に向け、2001年からアモイと台湾の金門島で限定的な小三通が行われ注目を集めた。三通は2008年に台湾の国民党が政権を奪回して以降、馬英九政権下で急速に進展し、直行便の運行、台湾側の本土観光客受け入れや、2010年には両地が自由貿易協定(FTA)に相当する経済協力枠組み協定(ECFA)を締結するなど三通を越えた交流が進んでいる。
華僑ネットワーク
同省は、広東省同様に華僑を多く輩出しており、華僑投資が盛ん。特に沿岸部の閩南(ミンナン)地域は広東省の潮汕(潮州・汕頭)と五邑(ウゥバー)とともに「全国三大華僑の里」と呼ばれている。
福建籍の華僑は世界に1088万人、香港・マカオに123万人いるといわれ、台湾人の8割はかつて福建省から渡った華人。このため、広東省同様に華僑ネットワークが強く、華僑と台湾人の投資に支えられ、華南地域では広東省に次ぐ経済発展を実現した。
文化飲食
言語は福建語。沿岸部の閩南地域は閩南語、山間部の閩北語を話すほか、客家も多いため地域によっては客家語が使われる。福建省と台湾は歴史的背景から文化的類似性が高く、現在の台湾語は閩南語を基調としている。
福建省の料理は山海の珍味が多い。細やかな包丁使いとスープの種類の多さが特徴。一般に魚介類は生臭さを消すために砂糖と酢を使った甘酸っぱい味。百年の歴史を持つ「佛跳墻(フゥオティヤオチヤン)」は鍋の底にカモ、羊、豚肉とフカヒレ、アワビ、中華ソーセージを敷き、シイタケ、タケノコなどの野菜とナマコ、魚の唇、薬味を置き、紹興酒を加えたスープで煮込んだ同省を代表する料理。